三菱ケミカルホールディングス(4188)は、2019年11月18日に田辺三菱製薬(4508)の完全子会社化を目的とするTOBを発表しました。TOB価格は2,010円(11月18日終値1,338円)、応募期限は2020年1月7日です。
この発表後に三菱ケミカルの株価は下落しました。買付総額が4,918億円と大きく、財務面での負担や増資の可能性が懸念されたためだと思われます。
ただこのTOBは、後になって良いタイミングだったということになるかもしれません。田辺三菱製薬(4508)の株価は2018年以降大きく下落しています。特に19年2月に、当社が開発したの多発性硬化症治療薬ジレニアの特許に関して、導出先のノバルティスがロイヤルティー(特許権使用料)の一部について支払い義務がないと申し立て、それ以降の株価の低迷は顕著となっています。年間約600億円のジレニアのロイヤルティーが大きく減少する可能性を考えれば、田辺三菱製薬の株価下落は当然かもしれません。
その渦中で親会社である三菱ケミカルホールディングス(4188)によるTOBです。ノバルティスとの特許問題により田辺三菱製薬の株価が低迷している状況は、親子上場問題を含めガバナンスを強化している三菱ケミカルホールディングスにとって絶好のチャンスだったのでしょう。
田辺三菱製薬の開発品には、ホットフラッシュ治療薬MT-8554、NASH(非アルコール性肝炎)治療薬MT-3995など期待の新薬があります。今後は製薬子会社を取り込んだ三菱ケミカルホールディングスの新薬開発の進捗動向が注目されます。