イチケン(1847)の20/3期予想配当は80円で、2019年7月12日の株価1,705円に対して配当利回りは4.7%です。
当社の筆頭株主は、パチンコホール大手マルハンで32%を保有しています。もともとはダイエー系列でしたが2000年代半ばにマルハンが株式を買い取りました。商業施設の内装工事が得意であり、マルハンとしては店舗拡大戦略に沿ったM&Aでした。ただしパチンコの新設店舗が少なくなった近年では、当社の受注に占めるマルハン比率は極めて小さくなっています。
業績は18/3期の売上高820憶円、経常利益50億円に対して、19/3期は売上高938憶円、経常利益46億円と増収減益でした。20/3期会社予想は売上高880億円、経常利益40億円です。株主総会では「受注残高が688億円もあるのに、なぜ減収減益なのか?」という質問が出ていましたが、社長は「手持ち工事の大型化で、688億円の残高のうち20/3期に売り上げ計上となるのは530億円、したがって期中受注期中売上で350億円が必要で、これは決して低い目標ではない」と回答していました。
ただし利益の方は多少予算に余裕があるようでした。19/3期の利益率低下要因は、受注過多による突貫工事があり費用がかさんだためで、20/3期はそうした特殊要因がなくなるためです。
配当は80円の安定配当が基本のようです。配当性向が21%と低く、増配余地がありそうに見えますが、総会では「自己資本比率がまだ低いため、自己資本の積み上げを優先したい」とのことでした。当社の自己資本は198億円で、自己資本比率は34%です。他の建設会社と比較するとやや低い水準です。当期利益28億円、配当総額5.6億円とすると、3年程度で他の建設会社並みの自己資本比率に上がってくる感じでしょうか。
当社は中期経営計画を発表しています。現在の計画は20/3期が最終年度となるので、来年の春ごろには新しい中期計画が発表される予定です。オリンピック後の建設業界の見通しは不透明ですが、増配を見据えた資本政策を期待したいところです。
足元の業績以外の材料としては、インバウンド関連としてわずかな可能性があるかもしれません。財務が強固なマルハンが統合型リゾートでカジノを運営すれば、当社にも恩恵がありそうです。また近年急増している外国人観光客が、日本独特の文化であるパチンコを体験したいと考えれば、パチンコ店舗の内装も必要になるでしょう。現在のパチンコ店では、タバコ、音響、めまぐるしい光、複雑な台の仕掛けなど、ハードルが高すぎて、とても外国観光客が入店できる雰囲気はありません。禁煙、低音響、簡単な台(ハネものなど)、アニメ台(キャプテン翼など)といった、外人観光客を呼び込むパチンコホールが出来てくれば、面白い展開になるかもしれません。