第一三共(4568)の株主総会に参加しました。話題の中心は、開発中の癌治療薬である抗HER2抗体薬物複合体(ADC)トラスツズマブ デルクステカン(開発番号DS-8201)でした。もちろんその他の話題や質問、決議事項もたくさんありましたが、やはりDS-8201に比較的多くの時間が割かれました。
DS-8201は、HER2抗体トラスツズマブと癌細胞を特異的に死滅させる低分子薬物デルクステカンを、当社独自のリンカーを介して結合させた抗体薬物複合体(ADC)です。※HER2とは、細胞の増殖に関するタンパク質で、過剰に発現すると細胞の増殖制御ができなくなり癌化する。DS-8201はHER2陽性の癌細胞でリンクが特異的に外れ薬物であるデルクステカンが作用する。
2019年3月29日にアストラゼネカとの共同開発に進展することが発表され、株価は前日の4,400円から最近では6,000円台となっています。アストラゼネカからは、契約一時金13.5億ドルを含め、開発段階に応じて総額69億ドルが当社に支払われる契約となっています。
今後の焦点はこのDS-8201の開発の進捗です。まずはHER2陽性の乳癌患者で、1次療法(トラスツズマブ、ペルツズマブ+化学療法剤)、2次療法(トラスツズマブにエムタンシンを付けた薬剤=商品名カドサイラ※DS-8201と同系統の抗体薬物複合体)で効果の出ない患者に対する3次療法剤として、今年度上期に米国で、下期に日本で製造承認の申請を予定しています。さらに次のステップとして、カドサイラとの直接の比較試験、HER2低出現の乳癌、また胃癌、大腸癌などへの適用、オブジーボとの併用試験も期待されています。
加えて、DS-8201に続く抗体薬物複合体(ADC)であるDS-1062、U3-1402も非小細胞肺癌などを対象にフェーズ1(臨床試験第一相)にあり、ADC薬剤群の拡大が見込まれます。インドのランバクシー買収で大きくつまずいた当社が、ADCで復活するかもしれません。
なお株主還元については、17/3期~23/3期まで配当70円+自己株取得により総還元性向100%以上を実施する予定です。